無職の雑記

Garbage in, garbage out.

坂口恭平『モバイルハウス』

坂口恭平『モバイルハウス』を読んだ。

車輪のついた、移動のできる3畳ほどのハコ(モバイルハウス)を、ホームレスとしてコンパクトなすみかを見事に作成していた彼の師匠に教わりつつ作っていく過程。そのモバイルハウスを置く「駐車場」を探索したら、意外や意外、そんな変なものを置かせてくれる大家さんってこの世に案外いるらしいってこと。それから震災後に熊本に移住した経緯なんかが書いてある。

彼は芸術家(建築家)の活動の一環としてそれをしているわけで、この本にはそのまんま普通の生活にインストールできるようなことが書いてあるわけではない。けど、彼の発しているメッセージは、誰にとっても有用だ。何であれ自明視されているものに対して、必要なんだろうか、と考えなおしてみること。そうして固定した現在をもう一度流動化させたら、別の世界が見え、自由が開けるということ、そして、それは何よりワクワクするようなことだ、ということ。それを彼は、「モバイルハウス」の作成と運用を書いていく中で、示す。

彼の言い分は、どこかしらエコロジーな感じ、あるいは「ミニマリスト」な感じと似ているけれど、多分違う。というのも例えばーーまあ、ネットで観測した限りの話だけどーー、ミニマリストって、「何かを買わない事自体」を「消費」する人々にしか見えないからなんだけれど、坂口さんの場合には、まず何より考えることに力点があるからだ。考えた結果としてミニマリストと重なっても良いのだが、逆に大豪邸に住むことになってもそれはそれで良い。何より重要なのは、考えること、そして、考えたら楽しいってことだ。

私は彼のようにアクティブでなく、人的資産もないし、考えるのも色々面倒だと思うのだが、それでも自分なりの水準で少しずつ動かせることがあるよなあとこの本を読んでて、思った。そうしたことを、ちょっとでも考えてみるのはいつだって無駄でなく、その時、坂口さんの本は、些細に役立ってくれると思う。個人的に、このタイミングで読めてよかった。